プロジェクト
PHILTRANS ——「翻訳としての哲学——翻訳的教育に向けて」とは、個人のポスドク・プロジェクトであり、欧州委員会(マリー・キュリー・アクション)による助成を受けたものである。プログラム・リーダーはエレーナ・ナーデリであり、プロジェクト拠点はパドヴァ大学と京都大学にある。
PHILTRANSの核心にある信念は、哲学はもはや翻訳についての体系的な反省を先送りできないという考えである。これは人文学に広くみられる「翻訳的転回(translational turn)」によるものではなく、翻訳が哲学それ自体の中心に位置するものだからである。
思想史を通して翻訳と哲学の相補的な関係は、二つの仕方で現れる。すなわち一つには哲学の翻訳として、もう一つには翻訳の哲学、すなわち、離散的に見られる哲学についての諸考察という仕方で現れる。仮説によれば、二者のあいだにはさらに密接な関係が成立する。その関係性は、哲学の実践と意味それ自体にかかわるものであり、これは翻訳的な要素なしにはあり得ない。翻訳は哲学の原動力である。それは様々な哲学的企図の初期の形成的な要素を成すものであり、古典のテクストの変容と、さらには——これこそより重要なことであるが——翻訳者の変容をもたらすものである。
この記事の日本語への翻訳は、木本蒼が担当しました。